日立建機、国内の開発・生産拠点を大幅再編-グローバル競争力を強化

■ KCMを日立建機に合併、機能別に開発・生産の高効率体制を確立

 日立建機は9月27日、グローバル競争力強化のために国内の主要開発・生産拠点の大幅な再編を決定したと発表した。これに伴い2015年に子会社化した㈱KCM*1を2019年4月をめどに吸収合併するとともに、機能別に拠点を集約し、2022年度をめどに開発部門の統合と、部品から完成品までの一貫した生産体制を確立する。

 現在、建設機械業界は、堅調な国内市場をはじめ、主な海外市場でも旺盛な需要が続いており、今後も成長の見込まれる国・地域も多数あることから、中長期的にも成長産業と見られている。このような中で、建設機械に求められる安全性、生産性などの顧客の要望は益々高まっており、さらなる環境や自動運転などに対応した最先端技術の開発が必要となっている。またグローバル規模での競争も激しさを増しており、生産体制の最適化は急務となっている。

 こうした環境下におかれている日立建機は、中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」で新車の販売事業以外のアフターセールス事業をバリューチェーンと位置付け、需要変動に強い体質へと転換を図ると同時に、業界トップ・レベルの油圧ショベル事業をさらに拡大し、またホイールローダ、マイニング向けのダンプトラックの事業強化をめざしている。このため海外では、生産・販売に至るまで継続的に事業構造改革を推進しており、すでに中国、インド、オランダなどでは主要な生産拠点の統合などを進めている。

 一方、日本では、2015年10月にKCMを完全子会社化し、翌年4月にホイールローダの開発・製造事業を日立建機からKCMに移管、また2017年3月に当時の日立住友重機械建機クレーンの保有株式を一部売却し、持分法適用会社とするなど、一連の事業構造の転換を進めてきた。

 *上図は現在の体制、下図は再編後(2022年)のイメージ

 国内の生産体制は、土浦工場から常陸那珂臨港工場に大型油圧ショベルの生産統合を進めるなど、すでに再編に着手しているが、ホイールローダを手がけるKCMや、ミニショベルを担当する㈱日立建機ティエラまで抜本的に最適な開発・生産体制の検討を重ねてきた結果、今回主要な開発リソースの集約と生産拠点の再編を正式に決定したもの。具体的には2022年までに、一般建設工事向けのコンストラクション*2 とマイニング*3 向けの油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダ、さらにミニショベルやミニホイールローダなどコンパクト*4 機械の開発と生産を機能別に再編する。

 対象事業所は、日立建機の茨城県内にある土浦工場、常陸那珂臨港工場、霞ヶ浦工場、常陸那珂工場と、日立建機ティエラの滋賀工場(滋賀県)、KCMの龍ケ崎工場(茨城県)、播州工場(兵庫県)の7拠点。これに伴い、2019年4月をめどにKCMを日立建機に吸収合併する予定。詳細は、別途決議する予定。

 なお、今回の再編の関連投資は420億円ほど見込んでいるが、経営計画に織り込み済みで、現時点では大幅な業績数値の変動は発生しない。また、今回の再編に伴い人員の再配置を行う予定であり、今後、詳細を詰めていく。今回の施策を海外で進めている改革と組み合わせることで、引き続き強靭な事業体質への転換を図っていく。

■主な再編項目

(1) 中型油圧ショベル、中・大型ホイールローダ製品・部品の生産体制の集約

・土浦工場とKCM龍ケ崎工場の位置付けを、「コンストラクション」工場とする。両工場を、一般建設工事向けの中型油圧ショベルや中・大型ホイールローダの生産拠点として最適化する。

・「コンストラクション」の中で土浦工場は完成品工場、KCM龍ケ崎工場はその主要部品工場に転換、油圧機器、製缶品、小型部品から完成品まで一貫生産体制を土浦・龍ケ崎地区に集約する。

(2) 鉱山向け大型油圧ショベル、ダンプトラック製品・部品の生産体制の集約

・常陸那珂臨港工場の位置付けを「マイニング」工場とする。鉱山向けの大型油圧ショベル、ダンプトラック、超大型ホイールローダの完成品工場として生産を集約する。

(3) ミニショベル、ミニホイールローダ製品・部品の生産体制の集約

・日立建機ティエラ滋賀工場とKCM播州工場の位置付けを「コンパクト」工場とする。両工場を、ミニショベル、ミニホイールローダの生産拠点として最適化する。

・「コンパクト」の中で、滋賀工場は、完成品工場、播州工場はその主要部品工場へ転換、製缶品、薄板金部品、さらにホイールローダ用キャブと運転席の艤装等生産を行う(播州工場は中・大型ホイールローダおよび超大型ホイールローダ用の主要部品も生産)。

・ミニショベル、ミニホイールローダの部品から完成品までの一貫生産体制を滋賀・播州地区に集約する。

(4) コンポーネントの生産体制の集約

・霞ヶ浦工場と常陸那珂工場の位置付けを「コンポーネント」工場とする。両工場では油圧ショベルやダンプトラック、ホイールローダの最重要部品である油圧機器、ドライブユニットの量産工場に転換を進め、「コンストラクション」や「マイニング」向け部品の生産拠点として集約する。

(5) 開発体制の集約

・現在、土浦工場、播州工場、龍ケ崎工場、滋賀工場の4拠点に分散している開発部門を、「コンストラクション」と「マイニング」は土浦工場、「コンパクト」は滋賀工場に各々集約、開発リソースを集中させ、開発効率や開発期間の短縮を図り、総合的な開発力を強化する。

 日立建機グループは、今回の再編を通じ、グローバル市場に対する技術・製品開発力の強化を実現するとともに、高効率な生産体制の構築をめざす。また、同時に設備投資の適正化や固定費削減等を実現し、変化に強い高収益体質の確立に取り組む。

 これまでも顧客の身近で頼りになるパートナーとして、社会課題を解決するソリューション「Reliable solutions」の実現に取り組んできたが、今後も、日立建機グループ総力を挙げ、今回決定した施策を着実に遂行し、顧客の課題解決に真摯に取り組んでいく。

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*1: ホイールローダの開発および製造を行う日立建機のグループ会社

*2: 大規模から中規模の土木・建設工事に使われる中・大型油圧ショベル・中・大型ホイールローダ

*3: 大型インフラ工事や砕石・鉱山での採掘・運搬に使われる超大型油圧ショベル・マイニングダンプトラック

*4: 農作業や狭小地の工事などで使われる小型のミニショベルとミニホイールローダ

 ニュースリリース

 説明資料:国内の事業構造改革について

 9月28日:日立建機よりイメージ図(訂正)が発表されました。(イメージ図は差し替え済み)